*プレゼント フォー ユー 前*

 

膨大な寮の書類の山を前に、僕はもう今日何度目になるか分からない溜息を、また一つ吐いた。
慌てて今吐いた息を大きく吸い込む。
どっかのハゲの「ため息ついたら幸せも出てくぜ」なんて馬鹿な言葉のせいで。

そう、そもそものはじまりは一角の余計な一言のせいだ。
「お誕生日おめでとう」なんてガラにも無い事クソ真面目に言っちゃってさ。
それで他の隊員に「綾瀬川さんの誕生日、今年は敬老の日なんすねー!ギャハハ!」なんて大笑いされて。
人に褒められることはあっても笑われるのなんて生まれて初めてだよ、まったく。

で、気づいたら
「綾瀬川さんは、静かに座って書類でも片付けててくださいよ。」
「そうそう、力仕事はおれら若いモンがやってきますから!」
なんて、言われるがままに机に座らされてたって寸法。
いつのまにか僕の前には次々と未処理の書類(しかも〆切間近なものばかり!)が積み上げられていって。
文句を言おうとしたら、もう執務室には誰もいなくなっていた。
僕のほうが若いのに、さ。

「ナルちゃん!」

声がする方を振り向けば、副隊長が戸の隙間から桃色の髪を覗かせて、にんまりをこちらを見ていた。

「頑張ってねー!きっとつるりんが助けてくれるよ!」

無責任なアドバイスを残し、副隊長はピシャリと戸を閉めて去っていってしまった。
剣ちゃーん!置いてかないでよ!うるせぇ。今日ゆみちーの誕生日なんだって。あぁ?誕生日だぁ?知るかんなもん。
二人の声が段々遠ざかっていった。

そんなわけで、今はこれらを前に途方にくれている。
全く五席ともあろう僕が、書類処理なんて。
剣を握ったのならともかく、ペンダコなんて全然美しくない!
僕の藤孔雀の美しい刀身が、錆びちゃったらどうしてくれるのさ。
大体、この原因を巻き起こした張本人は、どこへ行ってしまったのだろう?
人に書類を処理させといて、自分は斬りに行ってたりしたら許せない。

「おー、弓親。」

噂をすれば。
ガラッと音を立てて、一角が部屋に入ってきた。

「何してんだ・・?・・って、うぉっ!」

机に近づいてきた三席は、僕の前にそびえたつ書類に唖然とする。

「どうしたんだよ、これ・・?」
「君の所為でみんなに押し付けられたんだよ!もう!人にこんな事押し付けといてどこいってたのさ!?」
「俺の所為じゃねーよ!ちょっと部屋に戻って出かける準備してただけだ。」
「え、手伝ってくれないの?」

思わず、振り向いて一角を見れば、頭を掻き掻きバツの悪そうな表情をしていて。

「あー・・今日は敬老の日だからじーちゃんちに肩もみに行かねぇと」
「はっ?ちょっ・・そんなのいないだろ!」
「って言うのは嘘でこれからお前のプレゼント買いに行くから、よ・・・はは」
「プレゼントはいいからこれ手伝って・・・あ!卑怯だぞ!」

ガラガラ、ぴしゃり。

あーあ、プレゼントは嬉しいけどさ。

「とびっきり美しいものくれなきゃ、許してやんない。」

まったく、と小さく呟く。
それでも、とりあえずこの書類は片付けなきゃいけないから(どうせ書類が遅れて怒られるのは多分僕だし)、黙々と作業をこなした。
さすが僕、なんて一人思ってみたり。

と、覚えのある霊圧が詰め所に近づいてくる。
意外な来客の訪れに、僕は思わず筆を止めた。
足音が近づく。

「失礼しまー・・・・・・っ!?」

予想通り、来訪者は詰め所に僕しかいないことを確認すると、ぎょっとしたように絶句し、後ずさった。

 

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だらだらと続きますよ。

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