思えば僕の誕生日が九月一九日、君が十一月九日、と似たような数字なのもなんだか運命みたいで嬉しい。
だから僕が三の次に好きな数字は実は一と九だったりする。
あ、もちろん「五」は別格だけどね。

 

 

霜月九日の受難

 

 

「あー、だりぃ」
「だるいって、さっきから何も掃除してないじゃない。」
「おまえもな。」
「だるいって・・風邪でも引いた?」
「(無視かよ)風邪だぁ?俺が?」
「だってこんな寒いのに裸足だし、頭もさ・・ぷっ」
「今なんつった?」

なーんにも、といたずらっぽく笑って弓親は一番近くにある白い塀に背をもたせかけ、腰をおろした。
基本的に各隊舎の掃除はそれぞれの隊の新米などの下位の死神が当番制で行う事になっている。
しかし、ここ十一番隊では「そうじやってみたいー!」という副隊長の気まぐれにより、隊長含め全席官に当番が廻ることになっている。
弓親は、持っていた箒をつんと指ではじいた。
箒は弓親が腰掛けた位置から逆の方向に倒れ、こつんと音を立てた。
一角も肩をこぶしでとんとんと叩きつつ、その隣にしゃがみ込む。
今日の当番は完全サボリ決定だ。

「あ゛ー、いい天気だな。」
「こんな日に掃除なんて馬鹿らしいよね。」
「あぁ・・。」
「一角。」
「あ?」
「お誕生日おめでとう。」
「あぁ、サンキュ。」

誕生日を祝うなんて、もう何十回も繰り返してきたことだろうから、近頃(といってもここ十数年)は毎年普通に言って終わりだ。
最初やたらプレゼントをあげて呆れられたのも懐かしいが、こんな風に一緒にいた月日の長さに
思いを馳せてみるのも悪くは無いと、今更ながら弓親は思った。

「プレゼントだけどさ。」
「おい、毎年気ィ使わなくていいって言ってるだろ。」

一角はそう言いつつ、弓親の誕生日には毎年律儀に忘れずにプレゼントを贈るのだが。

「そろそろその髪型にも飽きてきたでしょ?」
「は?」
「もちろんそのままでもいいけど、これをつけたら君はもっと美しくなるはずさ!」

そう言いながら、袂から何かを取り出して一角の頭にぐしゃっとかぶせた。
視界に黒いものがチラチラと入り、一角は鬱陶しげに目を細めた。

「なんだこりゃ・・?」

頭上から垂れてきた黒くつやつやとした糸状のものを掻き分け、ようやく開けた視界で弓親を見れば
相方はこれ以上ない満面の笑みで、自信たっぷりににんまりと笑った。

「僕の髪型のウィッグだよ!!」
「・・・・・・・・!?」

美しくなったよー、と弓親が懐から出した手鏡に映った自分の姿に、一角は顔がピキッと引き攣るのを確かに感じた。
先日の旅禍事件でアフロになったときにも、突然自分のかつらを取り出してかぶった事に驚いたが、
まさか自分のかつらをいくつも持っているとは・・・。
何十年も一緒にいるが、未だにこの男の思考回路が分からなくなる時があると、一角は苦笑した。

「お前・・・これ、ヅラ・・・?」
「失礼な!かつらじゃなくて、『ウィッグ』だよ!」
「うぃ・・うぃ?」
「一角のためにわざわざ技術開発局に特注で作ってもらったんだ。似合ってるよ!」

にっこりと、嬉しそうに言われればつき返すわけにも行かず、一角は引き攣った笑みのまま鏡をもう一度見つめた。
背筋にさぁっと、冷たいものが走る。

「これさ、ここみつあみにしたら可愛いし、こう・・・こうしたら、隊長みたいにできるよ!」
「はは・・・。」
「鈴つけたらいい感じだと思うし、もちろんこのままでも充分美しいけどね!」

 

とりあえず、弓親の力説するかつら使用例講座(手入れがとても面倒そうだと思った)が一段落して
ほっとしつつ、一角は視線を蒼天へと移した。心の中で呆れとも苦笑ともとれぬ、ため息をつく。
弓親は、相変わらず傍らで不気味なほどに、にこにこしている。

「あー!つるりんがナルちゃんになってる〜!!」

突然黄色い声があがり、声の主を探せばもたれていた壁の屋根瓦の上からピンク色の髪がひょっこりと顔をのぞかせた。
珍しく、更木隊長の背中の上ではなく一人だった。

「つるりん、おもしろーい!あはは!!」
「うるせーよ、どチビ!」
「ナルちゃん作戦成功だね!」
「は?」

一角は訝しげに、隣に座る同じ髪型の相方を見返す。
見れば、弓親は口に手をあてつつ、震える肩で笑いを押し殺していた。
やちると「成功だねー」なんて、可愛らしく首を曲げて言い合いつつ。

「ちょ・・おまっ!弓親!?」

ようやく弓親とやちるの策略に気づいた一角は、さっき鳥肌に耐えつつ喜んだフリをしてプレゼントを受けとった事を心から後悔した。
その様子に、弓親はこらえきれずに、ついに腹を抱えて笑い出した。

「あっはっは!一角馬鹿じゃない!?」
「つるりんだまされたー!」
「そんないくら相手が一角でも誕生日にウィッグ贈る人なんて居ないよ。」
「るせぇ、お前ならありえそうだと思ったんだよ!!」
「それ、どういう意味さ。だいたいこの髪型はこの僕にしか似合わないしー。」
「髪の毛生えてるつるりんなんてつるりんじゃないよ!」
「・・・・・・・・。」
「あ、怒った。」
「ゆでダコつるりん」
「ここは逃げるが勝ちですね、副隊長!」
「れっつごー!」

掃除用具を放り出して、弓親とやちるは一目散に駆け出した。

「あ、こらァ、てめぇら逃げんじゃねー!」

後ろから、今にも抜刀しかねん勢いで一角が追いかけてくる。
二人はかまわず走り続けた。

「ちょっといじめすぎましたかね。」
「つるりんが、怒りすぎなんだよ!」
「でも、かつらかぶったまま怒っても迫力ありませんね。」

 

今日も十一番隊は平和だ。
こんな風に、来年も再来年も、ずっとずっと一角が生まれた日を祝えたらいいと弓親は思った。

 

ヅラを贈られ、後日もそれを被ることを強要された一角にとっては受難の日でしかなかったが。

 

 

 

 

ハゲお誕生日おめでとう!!!!
基本的にゆみち&やっちー姉妹(そこ!つっこまない!ゆみちおにゃのこだから!)は、つるむと一角をいびってるといいです。
十一番隊4人可愛いよなぁ・・(● ´ ω ` ●)あ、剣ちゃん出すの忘れてました、、、すみませ・・!!

 

 

 

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