●君の軌跡●



全く生きているのが不思議な程に傷を負った体を布団に横たえながら、
本当にこの男の生命力はたいしたものだと思った。
先ほどから一角にやたら色目を遣うこの家の住人が、しきりに介抱を申し出るのを丁重に断れば、
彼女は残念そうな顔をしながらも渋々出て行ってくれた。

深い傷、紅い鮮血、横たわる君。
そんな光景にふ、とデ・デジャヴを感じて僕は首を傾げた。
君も同じように視線で昔の思い出を辿っているのが分かった。
僕はやっとその原因を手繰り寄せて思い出す。


「あの日もこんなんだったよね。」
「・・・・・・・あぁ、そうだっけな。」

そのまましばらく沈黙が生まれた。
出逢って間もない頃の僕ら、君があの人に出会った日、君の世界が色を変えた日。
多分二人とも思い出していることは、同じ。
心地良い沈黙だった。



「あの時の君、情けなかったなぁ。」
「うるせぇ、悪かったな。」
「もうそんなに憎まれ口叩けるようになったんだね。」

良かった、と。そう心から思った。
君が生きていて本当に良かった。
ありきたりな言葉しか生み出せないこの口が悔しいけれど。

「ねぇ、薬塗ってあげるよ。」
「おう、頼んだ。」

僕は君の斬魄刀から血止め薬を取り出し、丁寧に塗っていった。

「いてっ・・・!」
「こんくらい我慢してよね。」
「すいません。」

僕が軽く睨んでみせると、君は苦笑しながらも素直に従った。
自然と微笑みが零れる。


「覚えてる?」

薬を塗った後、その隣にある古い傷跡を僕はなぞった。

「これは、君が隊長に斬られた傷。」

目立たないながらも、かすかに面影を残す隆起した皮膚を、慈しむように辿る。
そして、今度は肩から腹にかけて大きく広がる、別の幾分新しい傷を同じようになぞった。

「これは、この間あの旅禍に斬られた傷。」
「・・・・よく覚えてんな、いちいち。」
「これだけじゃないよ、全部覚えてる。」
「んなもん、俺でさえ覚えてねェよ。」


君がその身に刻んできた傷の一つ一つが、こうして今の君を形成しているのだと思うと、
それらがとても愛おしく思えた。
それらは戦士にとっては恥だと、君は言うけれど。

「だいたい、そんなの覚えてても意味ねぇだろ。」


僕はいつだって信じている。
君のその研ぎ澄まされた精神は、魂は、どんなすさんだ世界が待ちうけていても
決して色褪せる事はないのだ。
死でさえも君の世界を壊すことはできないのだ。
昔からも、今も、これからも。


「だって美しいんだもの。」


僕はいつだって傍で見ているから。
昔からも、今も、これからも。ずっと。




ゆみちは、一角の身体につけられた傷を、全て知ってるといいな。いや、変な意味じゃなくて(笑)
でも一護につけられた傷に関しては、あまり慈しんでなければいい。むしろ無いものとして、完璧無視。(弓親は一護が嫌い/希望)

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