「花葬」

それはいつもの散歩道。
そろそろ色付きだした並木道の真ん中で、ぽつんとただ一本だけ
薄紅色のつぼみをたくさんつけた桜の木があった。

『なんだ、あれ?』
『狂い咲き、っていうんだよ。』
『狂い咲き?』
『その花が咲くべき季節じゃないのに、咲く花だよ。』

僕の頬に付いた花弁の一片を、君は武骨で美しい指で掬い取った。

『もうすぐ満開かな。』
『へぇ。』

君は、大して興味も無さそうにさっさとその桜から目を離した。
いつものように隣ではなく、僕の数歩前を歩く。
何故だか僕はその背中を見ながら、桜の木の前から足が動かなかった。

(あ・・・・)

戦慄した。
それは、絶望にも似た予感だった。


この花の咲く頃、きっと君はいない。


そしたら冷たくなった君を、まだ色さえ知らない花びらに埋めて葬ってあげる。
きっとそれは切ないほどに美しいに違いない。

『おい、弓親行くぞ?』
『うん・・』

そして僕は、きっと泣いてはあげない。

 

 

丁度本誌で角弓シリアスモードが満開だったころに触発されて書いた短文。
とりあえず死なないでくれてよかった・・!

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